「もっと頑張らなきゃ」。先生方は、いつもそう思いながら走り続けているのではないでしょうか。
でも、もし今あなたが疲れきっているなら、僕がお伝えしたいのは逆のことです。頑張る前に、まず「自分を整える」こと。眠ること、休むこと、体を動かすこと、食べること、そして自分と向き合うこと。一見、仕事とは関係なさそうなこれらが、実はあなたの仕事の質を、根っこから変えていきます。
かつての僕は、自分の心と体を一番後回しにしていました。そして、すり減っていきました。この記事では、そんな僕を立て直してくれた習慣を紹介します。
この記事でわかること
- 心と体はつながっていて、整えるほど良い判断ができ、仕事の質まで変わること
- 僕の毎日を変えた、5つの小さな習慣(眠る・休む・歩く・食べる・自分と対話する)
- 頑張ることより先に、やってほしいこと
頑張る前に、整える
仕事の質を決めるものは何でしょうか。スキルや経験ももちろん大切です。でも、その土台にあるのは「コンディション」だと、僕は思っています。
どれだけ知識や経験があっても、寝不足で頭が働かなかったり、心がすり減って余裕がなかったりすれば、良い判断はできません。逆に、心と体が整っていれば、同じ仕事でも驚くほどスムーズに進みます。
ここで一つ、大切にしていることがあります。それは、整えるのは「体」だけではない、ということです。体と心は、切り離せません。体が整えば心も落ち着き、心が整えば体も軽くなる。この二つは、いつも一緒に動いています。だからこの記事では、体を整えることと、心を整えること、その両方を大切にしていきます。
自分を整えることは、サボりでも甘えでもありません。むしろ、良い仕事をするための「一番の土台づくり」なのです。
すり減っていた頃の僕

かつての僕は、その土台をまったく大切にしていませんでした。
朝は必要最低限の時間に起き、余裕がなくて車の中で朝ごはんをかきこむこともありました。残業続きで生活リズムは崩れ、外食ばかりで体重は20kgも増えていました。睡眠は削るもの、休みは取りにくいもの、運動する時間なんてない。そう思い込んでいました。
その結果どうなったか。頭はいつも重く、心には余裕がなく、生徒に対しても怒ってばかり。それだけではありません。頭がうまく働かないので、面倒な判断を後回しにし、向き合うべきことから逃げていました。そうして問題はこじれ、複雑になり、うまくいかない。今振り返れば、落ち着いて考えればしなくてよかったはずの、愚かな判断を、何度も繰り返していたように思います。仕事は遅くまでかかり、それがまた生活リズムを崩す。完全な悪循環でした。
この悪循環を断ち切ってくれたのが、これから紹介する習慣です。どれも、特別なことではありません。
整える習慣① しっかり眠る
一つ目は、睡眠です。
かつての僕は、睡眠時間を削って働くことを、どこか「頑張りの証」のように思っていました。でも、これは大きな間違いでした。睡眠を削ると、日中の集中力も判断力も落ちます。結局、起きている時間の質が下がり、かえって仕事が遅くなる。削った睡眠の何倍もの時間を、ぼんやりした頭で無駄にしていたのです。
しっかり眠るようにしてから、日中の頭の冴えがまったく変わりました。同じ仕事が、短い時間で、しかも質高く終わるようになったのです。
そして、睡眠は体だけでなく、心にも効いていました。寝不足のときは、心がささくれ立ちます。生徒のちょっとした悪ふざけにも、すぐカッとなってしまう。あれは、心が健康でなかったのだと思います。しっかり眠れた日は、同じ場面でも「まあ、そういう年頃だよな」と軽く受け流せる。眠ることは、感情の余白を守ることでもあったのです。
睡眠は、削るものではなく、投資するもの。今ははっきり、そう感じています。
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整える習慣② しっかり休む
二つ目は、休むことです。
教員の仕事は、やろうと思えば無限に湧いてきます。だからこそ、意識的に「何もしない日」を作ることが大切だと、僕は考えています。おすすめは、土日だけでなく、思い切って年休を取って、平日にゆっくり休む日をつくること。
ここで一つ、提案があります。休みを取るとき、僕たちはたいてい「用事」で予定を埋めてしまいます。でも、その予定の中に、ぜひ「何もしない」「自分と向き合う」という時間を入れてみてほしいのです。
というのも、休むことには、体を休める以上の意味があるからです。まとまった一人の時間を持つと、自分としっかり向き合えます。ゆっくり散歩したり、コーヒーを飲みながら本を読んだりしていると、忙しさの中では見えなかったことが、ふと頭に浮かんできます。これから自分はどうしたいのか。何を大切にしたいのか。そうして自己理解が深まり、自分の価値観が少しずつはっきりしてくると、不思議と「よし、またやろう」という前向きな意欲が湧いてくるのです。
価値観の見つけ方は、こちらの記事に詳しく書いています。
もう一つ、休むことには、嫌なことから一度離れる効果もあります。いやなことがあったとき、その場に留まっていると、感情ばかりが大きくなります。でも、一度そこを離れてしまえば、心が落ち着き、「さっきのは、どういうことだったんだろう」と冷静に振り返れる。距離を取ることが、冷静な判断を連れてきてくれるのです。
実際、僕の人生が動き出したのも、世の中の動きが止まり、強制的に時間ができたことがきっかけでした。余白がなければ、考えることも、変わることもできなかった。休むことは、立ち止まって自分を取り戻す時間なのです。
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整える習慣③ 朝、歩く
三つ目は、朝の散歩です。
僕は朝、少し早く起きて散歩をするようになりました。すると、いくつもの良いことが起きました。
まず、歩きながらその日一日のことを考えられます。「この授業はどう展開しよう」「あの子にはこんな声をかけよう」。頭の中で一日の流れを組み立てておくと、仕事に余裕が生まれ、大事なことを見落とさなくなります。慌ただしさの中では難しい「優先順位の判断」が、歩いている間にできるのです。歩いていると血の巡りが良くなるからか、頭がよく働き、思いがけないアイデアがポンと浮かんでくることもあります。
そして、朝の光を浴びると、気持ちが前向きになります。早寝早起きの習慣も自然と整い、生活リズムが安定していきました。僕はできるだけ、緑のある道を歩くようにしています。いつもと違う景色や季節の移ろいに気づくと、それだけで新鮮な気持ちになれますし、自然の中に身を置くと、心がふっとほぐれてリラックスできるのです。
散歩には、もう一つ、思わぬ贈り物がありました。続けるうちに、体が少しずつ引き締まってきたのです。そして、鏡に映る自分を見て、「自分がやってきたことは、間違いじゃなかった」と思えるようになりました。小さな習慣を積み重ねた自分を、少しだけ誇らしく感じる。この、自分を信じられる感覚――自己肯定感や自己効力感とでも言うのでしょうか――が、日々を生きる静かな力になっていきました。
朝のたった少しの散歩が、心・体・仕事のすべてに、良い影響を広げてくれたのです。
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整える習慣④ しっかり食べる
四つ目は、食事です。
かつての僕は、食べるものにまったく無頓着でした。忙しい日のお昼は、カップラーメンでさっと済ませる。教員の職場では、珍しい光景ではないと思います。お昼はもちろん、給食のない夏休みや長期休業中に、職員室でカップ麺をすすっている先生の姿も、よく見かけます。
でも、あるとき気づいたのです。悪い油や、多すぎる糖質を昼にとると、午後の頭がまるで働かなくなる、ということに。思考力も判断力も鈍り、仕事の質が落ちる。おまけに強烈な眠気に襲われて、会議中にうとうとしてしまうこともありました。手軽なはずのカップ麺が、午後の自分の首を静かに絞めていたのです。
そこで僕は、食べるものを少しずつ変えていきました。特別なことはしていません。ジャンクなものを減らし、野菜をたくさんとることを意識する。朝ごはんも、きちんと整える。それだけです。
そしてもう一つ、僕が意識しているのが「腸内環境」です。お腹の調子は、体の疲れやすさから気持ちの安定まで、思っている以上にいろいろなことに影響すると感じています。だから、腸の中の良い菌を育ててくれる食べ物を、できるだけとるようにしています。納豆やキムチ、ヨーグルトといった発酵食品は、その代表です。特別なサプリを買わなくても、身近な食べ物で腸は整えられます。
すると、日中のコンディションが明らかに変わりました。午後になっても頭が重くならず、最後まで元気に働ける。コンディションの質が上がれば、仕事の質も上がります。今思えば、僕が定時に帰れるようになった理由の一つは、この食事の見直しにあったのだと思います。
そしてもう一つ、思わぬ良いことがありました。食事に気を使ううちに、自分で料理をする機会が増えたのです。すると、いつもごはんを作ってくれる家族への感謝が、自然と湧いてきました。子どもと一緒に台所に立てば、それがそのまま家族との時間になります。食事を整えることは、体を整えるだけでなく、巡り巡って心まで温めてくれる。そんなふうに感じています。

整える習慣⑤ 自分と対話する
五つ目は、自分と対話することです。
これは、目に見える体を整える習慣とは少し違います。自分の心の中を、ていねいに見つめる習慣です。
かつての僕は、頭の中のモヤモヤを、そのまま頭の中で抱え込んでいました。ぐるぐると同じ悩みを回し続けて、余計に苦しくなる。そんなことがよくありました。
そこで始めたのが、考えていることを「外に出す」ことです。以前は毎朝、ノートに向かって、今思っていることをひたすら書き出していました。一時間近くかけることもありました。頭の中にあるうちは形のなかった思いが、文字になると、はっきり見えてくる。「ああ、自分はこんなことを考えていたのか」と、自分で自分に気づく。自己理解が、驚くほど深まりました。
今は、その時間を朝の散歩に置き換えています。歩きながら考えごとをして、この頃は、AIに自分の考えを話してみることもあります。頭の中だけでぐるぐるさせるのではなく、一度外に出して、他の人の視点も通してもう一度眺めてみる。すると、凝り固まっていた考えが、ほぐれていくのです。
何もせず、ぼんやりと外を眺める時間も大切にしています。僕はもともと、職員室にずっと座っているのが少し苦手で、仕事の合間にふらっと外に出ることがあります。できれば緑の見える場所へ行って、ただぼんやりする。すると、慌ただしかった気持ちが落ち着き、不思議とアイデアが浮かんでくることもあります。
そして、自分と対話するためのもう一つの道具が、読書です。

僕にとって読書は、ただ知識を頭に入れる作業ではありません。本を読みながら、「では、自分ならどう考えるだろう」「この話を自分に当てはめたら、どうなるだろう」と問いかける。本との対話を通して、自分の考えがはっきりしていく。読書は、自分と向き合うための、とても優れた道具なのです。
さらに、読んで積み重ねた知識や知恵は、いざというときの自分を守ってくれます。
たとえば、心がざわついてモヤモヤしているとき。何も知らなければ、その感情にただ振り回されて終わってしまうかもしれません。でも僕は、以前読んだ本で「ストレスは、体が最高のパフォーマンスを出そうと準備している状態でもある」と学びました。それを思い出すだけで、同じ状況でも受け止め方が変わります。ざわつきを、敵ではなく味方だと思えるのです。
もう一つ、学んで大きく変わったのが「リフレーミング」という考え方です。物事を見る枠組み(フレーム)を、あえて変えてみる技術のことです。
かつての僕は、「どうしてあの人は、あんな行動を取るんだろう」と、自分の視点だけで物事を見ていました。たとえば、急ぎの仕事をお願いしたのに、同僚が急にスマホをいじり始める。昔の僕なら、「なんで今なんだ」とイライラして、それで終わりだったと思います。
でも今は、少し立ち止まって、相手の側から眺めてみます。「何か急な連絡が入ったのかもしれない」「一度気持ちを切り替えてから取りかかろうとしているのかもしれない」。そんなふうにフレームを変えてみるだけで、不思議とイライラそのものが減り、たとえ一瞬カッとしても、そこから立ち直るのがずいぶん早くなりました。
こうして学びを続けるほどに、心と体の整え方は、少しずつアップデートされていきます。健康は、一度手に入れて終わりではありません。学ぶことで、より上手に、自分を整えられるようになっていく。それを、僕はこの数年で実感しています。
整えると、人生の歯車が良い方向に回り出す

この習慣を続けるうちに、僕の体は自然と変わっていきました。20kg増えていた体重は、無理なダイエットをしたわけでもないのに、少しずつ落ちていきました。早寝早起き、朝の運動、整った食事。小さな習慣の積み重ねが、自然と体を健康へ戻してくれたのです。
そして、健康を取り戻すと、頭の働きまで明らかに変わりました。
眠る、休む、歩く、食べる、自分と対話する。一つひとつは小さなことです。でも、これらは互いにつながっています。よく眠れば朝すっきり起きられ、歩けば心が整い、休めば余白が生まれ、きちんと食べれば頭が働き、自分と対話すれば心が軽くなる。一つが良くなると、次が良くなる。体が整えば心が整い、心が整えばまた体を大切にできる。良い循環が回り始めます。

そして、心と体が整うと、良い判断ができるようになります。逆に言えば、避けるべき「愚かな判断」が減っていくのです。投資家のチャーリー・マンガーは、賢くあろうとするより、愚かさを避けることの大切さを説きました。物事がうまくいかなくなる大きな原因を、あらかじめ取り除いておく。心と体を整えることは、まさにそれだと思います。大きくつまずかなければ、人生は大きくは崩れません。自分を整えることは、静かに、でも確実に、良い人生へと自分を運んでくれるのです。
まとめ:自分を大切にすることは、子どもを大切にすること
先生方は、子どものために、と自分のことを後回しにしがちです。その気持ちは、本当に尊いものだと思います。
でも、すり減った状態で子どもの前に立っても、良い関わりはできません。余裕がなければ、つい怒ってしまったり、子どもの小さなサインを見逃してしまったりします。逆に、自分の心と体が整っていれば、穏やかに、丁寧に子どもと向き合えます。
これは、子どもだけの話ではありません。自分が満たされているからこそ、まわりの人にも優しくできる。同僚に、地域の方に、そして自分の家族に。自分を大切にすることは、巡り巡って、大切な人みんなを大切にすることにつながっていくのだと思います。
最後に、一つだけ。ここまで五つの習慣を紹介してきましたが、どうか、全部を完璧にやろうとしないでください。完璧主義は、かえって自分をすり減らします。僕自身、できる範囲で、やれる分だけを積み重ねているだけです。どれか一つ、気になったものから。すり減りそうな今こそ、自分を整えることから始めてみませんか。
それぞれの具体的なやり方は、各記事に書いています。気になったものから、読んでみてください。

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